食品PBの作り方は、販売先と商品コンセプトを決め、製造メーカーとの条件調整、試作、表示・パッケージの確認を経て、製造・販売へ進めるのが基本です。
製造を外部に委託すれば、自社で工場を持たない食品卸や小売企業でも商品化を目指せます。
ただし、「作れる商品」と「売り続けられる商品」は同じではありません。製造単価が安くても、販売数量に対してロットが大きすぎたり、配送費や在庫負担を見込んでいなかったりすると、利益が残りにくくなります。
この記事では、食品PBを初めて開発する企業に向けて、企画から商品化までの7ステップ、費用と採算の考え方、小ロットで始める方法、メーカーへの相談前に準備することを解説します。
取引のあるメーカーがいる場合も、これから探す場合も、自社の状況に合わせて進めましょう。
食品PBとは?OEM・ODMとの違い

PBはプライベートブランドの略で、小売業者や卸売業者などが自社ブランドとして企画・販売する商品を指します。
例えば、食品卸が飲食店向けに自社名のソースを販売したり、土産店が地域の素材を使ったオリジナル菓子を展開したりする形です。
| 用語 | 意味 | 食品開発での関係 |
|---|---|---|
| PB | 自社ブランドの商品 | 誰のブランドで販売するかを表す |
| OEM | 他社ブランドの商品を受託製造する仕組み | 自社PBの製造をメーカーへ委託する際に利用する |
| ODM | 設計・開発から製造まで受託する仕組み | メーカーの開発力を活かして仕様を具体化する際に利用する |
PBとOEMは二者択一ではなく、「自社のPBをOEMメーカーに製造してもらう」という関係になります。なお、OEMでもレシピ開発から対応するメーカーがあります。
名称だけで判断せず、企画・配合・試作・表示作成・包材手配のどこまで依頼できるか確認しましょう。
食品PBの強みは、取引先の要望を商品に反映し、容量・味・使い方などで独自性を出せることです。一方で、初期費用、在庫、品質管理、継続供給への対応も必要になります。
既存商品の仕入れ販売と比べて、どの利益や取引拡大を目指すのかを決めておきましょう。
食品PBの作り方|企画から商品化までの7ステップ

食品PBを作るための7ステップをご紹介します。
| 工程 | 進めること | 次の工程までに決めること |
|---|---|---|
| 1.目的・販売先 | 顧客の要望と売り場を整理 | 誰に、どこで、いくらで売るか |
| 2.競合調査・企画 | 競合の価格・容量・特徴を比較 | 選ばれる理由と商品コンセプト |
| 3.製造先・条件確認 | メーカーの対応範囲と見積もりを比較 | ロット・費用・納期・役割分担 |
| 4.試作・仕様確定 | 味や使い勝手、量産の条件を確認 | 配合・容量・容器・保存条件 |
| 5.表示・パッケージ | 表示原稿とデザインを確認 | 最終原稿・印刷データ・承認者 |
| 6.製造・納品 | 発注、検品、保管・配送を準備 | 出荷条件と不良時の連絡体制 |
| 7.販売・改善 | 提案資料を使って販売し反応を集める | 再発注・仕様変更・追加生産の判断 |
1.目的と販売先を決める
まずは「なぜ自社PBを作るのか」を言葉にしましょう。
既存取引先への提案を増やしたい、他社と比較されにくい商品を持ちたい、取引先の調理負担を減らしたいなど、目的によって開発する商品は変わります。
販売先がスーパー、飲食店、土産店、自社ECのどれなのかも決めます。飲食店向けなら一食あたりの原価や作業時間、小売向けなら棚での見つけやすさや使い切れる容量、ECなら送料を含む購入価格が検討材料です。
例えば飲食店向けのソースなら、「おいしいソース」だけでは企画が広すぎます。「ランチ営業の仕込みを減らしたい店舗向けに、開封してそのまま使えるソースを作る」とすると、味以外に評価すべき条件も明確になります。
2.競合商品を調べ、コンセプトを絞る
想定する販売先と近い店舗・EC・業務用カタログで、競合商品の価格、容量、原材料の特徴、保存方法、パッケージの訴求を調べましょう。価格は1袋あたりだけでなく、100gあたりや一食あたりでも比較すると、容量の違いに左右されにくくなります。
営業担当者や既存取引先には、「今の商品で困っていること」「切り替えるなら必要な条件」「採用しやすい価格」を聞きます。
競合にない特徴を増やすより、購入や採用の理由になる違いを一つ決めることが大切です。コンセプトは「誰が・どんな場面で・何を解決できる商品か」の一文にまとめましょう。
味の方向性、容量、希望価格、必須条件と調整できる条件を添えると、メーカーとの打ち合わせに使えます。
3.メーカーに相談し、製造条件を確認する
取引のあるメーカーがいる場合は、希望する商品に対応できるかを最初に確認しましょう。
既存の関係があっても、冷凍、レトルト、焼き菓子、飲料などでは必要な設備や工程が異なります。対応できない場合は、作りたい食品の実績がある製造先を探します。
見積もりは、内容量・容器・初回数量・納品条件をできるだけそろえて依頼します。
「1個いくら」だけでは、試作費や包材費、検査費が別になっている見積もりと比較できません。初回費用と追加生産時の費用を分けてもらいましょう。
レシピや配合情報の扱い、原材料を変更する際の承認、包材の残在庫、納期遅延や不良品が出た場合の対応も、発注前に文書で確認します。自社開発のレシピを持ち込む場合は、情報の共有範囲も決めておきましょう。
4.試作を評価し、商品の仕様を確定する
試作品は、味だけでなく実際の使用条件で評価しましょう。
飲食店向けなら加熱後の状態、盛り付けやすさ、提供までの時間、小売向けなら開けやすさ、使い切れる量、保存のしやすさも確認します。
複数案を比べる際は、「塩味」「香り」「食感」「一回の使用量」「作業時間」など評価項目をそろえます。「もう少しおいしく」では修正の方向が伝わりません。変更したい点を具体的に記録し、最終承認する担当者を決めましょう。
試作で合意した内容は仕様書に残します。配合・内容量・容器・保存条件・品質基準などを整理し、試作品と量産品で違いが出ないか、量産前の確認が必要かもメーカーと相談してください。
5.食品表示とパッケージを仕上げる
包材のサイズや印刷範囲が分かってから、商品名、特徴、使用方法などを配置します。
店頭では陳列した状態、ECでは小さな商品画像でも、何の商品で誰に向くのかが伝わるか確認しましょう。デザインと並行して食品表示の原稿を準備します。
原材料や容量が変われば表示内容の修正が必要になるため、仕様が固まる前に印刷を発注しないようにしましょう。原稿の作成者、確認者、最終承認者を決め、校了した版を保存します。
実物サイズでの文字の読みやすさ、ラベル位置、賞味期限などの印字位置、バーコードの読み取りも確認します。JANコードの要否やケースへの表示は、納品先の指定を先に聞いておくと手戻りを減らせます。
6.製造・検品・納品の体制を整える
発注数量、納品日、納品場所、ケース入数、温度帯、支払条件を確定します。
製品の保管場所と配送方法も含め、販売開始前に受け入れられる状態を作りましょう。冷蔵・冷凍品は、保管と配送の両方で必要な温度管理を確認します。
納品時には数量、外装の破損、表示・印字、期限、ロット番号などを確認します。問い合わせや不良が発生した際に対象ロットと出荷先を追えるよう、受け入れ・出荷の記録を残しましょう。
メーカーと自社の連絡窓口、出荷停止や回収が必要になった場合の対応も決めておきます。
7.販売を開始し、再発注につながるか確認する
商品が完成する前から、商品写真、提案書、サンプル配布先、販売ページを準備しましょう。
食品卸の提案書には、商品の特徴に加え、使用例、規格、入数、保存方法、納品時の期限条件、取引条件をまとめると商談で使いやすくなります。
発売後は初回出荷数だけでなく、再発注した取引先の数、再発注までの日数、返品・廃棄、問い合わせの内容を確認します。「採用されたが再発注がない」場合は、味・価格・容量・売り場での伝え方のどこに原因があるかを聞き取りましょう。
消費者向けの商品なら、調理方法や活用例を動画で伝える方法もあります。発信内容を考える際は、食品会社のYouTube運用とショート動画の活用方法も参考にしてください。
食品PBの開発費用はいくら?内訳と採算の考え方

必要な費用は、食品の種類、既存レシピを使うか、容器を新しく作るか、製造数量などによって変わります。
まずは次の項目を分けて見積もりを取り、「商品が完成するまで」と「販売して代金を回収するまで」に必要な資金を把握しましょう。
| 費用項目 | 主な内容 | 見積もりで確認すること |
|---|---|---|
| 企画・開発 | 競合調査、コンセプト設計、レシピ開発、試作 | 修正回数、追加試作、サンプル配送の費用 |
| 品質・表示確認 | 必要な検査、期限設定の確認、表示原稿の作成 | 実施する項目と担当者、費用負担 |
| デザイン・包材 | パッケージ制作、版代、ラベル、袋、箱 | 製品とは別の最低発注数量、余った包材の扱い |
| 製造 | 原材料、加工、充填、包装 | 数量別単価、原材料価格が変わった場合の条件 |
| 保管・物流 | 倉庫、冷蔵・冷凍保管、配送、出荷作業 | 納品先数、温度帯、保管期間による追加費用 |
| 販売 | 商品撮影、提案書、EC、販売手数料、広告 | 発売前の初期費用と販売数に応じる費用 |
売価から逆算して、使える製造原価を決める
卸売の場合は店頭の販売価格ではなく、自社の卸売価格を基準に計算します。
ECの場合も、値引き、販売・決済手数料、自社負担の送料を差し引きましょう。製造単価だけを見て利益率を判断しないことが重要です。
1個あたりの限界利益 = 自社の販売単価 − 1個売るごとにかかる変動費
開発費などの初期固定費を回収する販売数量の目安は、「初期固定費 ÷ 1個あたりの限界利益」で計算できます。
例えば、税抜の販売単価600円、製造・包材費300円、配送や販売手数料などの変動費100円、初期固定費20万円と仮定すると、1個あたりの限界利益は200円です。
初期固定費の回収には1,000個の販売が必要になります。これは計算例であり、費用相場ではありません。
さらに人件費や継続的な固定費、返品・値引き・売れ残りも見込みましょう。採算上は成立していても、製造代金を先に支払い、販売代金の入金が後になる場合は、別に運転資金が必要です。
食品PBを小ロットで作るには?在庫を抱えすぎない方法

小ロットを希望する場合は、メーカーの既存レシピや標準容器を活用できるか相談しましょう。
中身を一から開発せずラベルや容量を変更する方法、既存の製造ラインで対応できる仕様にする方法などがあります。ただし、変更できる範囲はメーカーごとに異なります。
最小ロットは「個数」だけでなく、kgやLなど製造一回分の単位で提示されることがあります。また、食品の製造ロットと、印刷した袋・箱の発注ロットは別です。
製品を少量で作れても包材が多く残ることがあるため、両方を確認しましょう。
| 小ロット化の方法 | 確認する点 |
|---|---|
| 既存のレシピ・原材料を活用する | 味や原材料をどこまで変更できるか、独自性をどう出すか |
| 既製の容器にラベルを貼る | 貼付作業費、耐水性、保存条件への適合 |
| 商品種類を絞って発売する | 味や容量を増やす前に、最初の1商品で需要を確かめられるか |
| 取引先の採用意向を先に確認する | 初回発注の見込みと、確定注文を分けて把握できるか |
販売数量は「取扱店舗数 × 1店舗あたりの月間販売数」などに分けて試算します。
例えば10店舗で月20個ずつなら月200個、初回1,000個を売るには単純計算で5か月です。採用が半分になった場合も計算し、無理のない数量を検討しましょう。
製造から消費までの期限すべてを、自社の販売期間に使えるわけではありません。輸送・保管の日数や納品先の残存期限条件を差し引き、いつまでに出荷する必要があるか確認します。
単価を下げるための増産より、期限内に販売できる数量を優先しましょう。
製造メーカーを選ぶ際の比較ポイント

既存メーカーがいる場合も、新規に探す場合も、希望する食品での実績と運用体制を確認します。価格だけでなく、試作から追加生産まで継続して相談できるかを比較しましょう。
| 比較項目 | メーカーに聞くこと |
|---|---|
| 製造の適性 | 同じ種類・保存形態の商品実績はあるか。希望する原材料や容器を扱えるか |
| 開発の支援範囲 | レシピ開発、試作、検査、表示作成、包材手配を誰が担当するか |
| 数量と供給 | 初回・追加生産の最低ロット、増産対応、欠品時の対応はどうなるか |
| 品質管理 | 衛生管理の方法、原材料・アレルゲンの管理、ロット追跡や不良対応はどうなっているか |
| 取引条件 | 見積もりの有効期間、支払い、余剰包材、仕様変更・キャンセルの扱いはどうなるか |
| 情報の管理 | 配合やデザインデータの権利・利用範囲、秘密情報の扱いはどうなるか |
HACCPに沿った衛生管理の実施内容と、民間の第三者認証の取得は分けて確認しましょう。
認証の有無だけでなく、自社商品の製造工程でどのように管理されるかを聞くことが大切です。制度の概要は厚生労働省のHACCPに関する案内で確認できます。
食品表示・賞味期限・営業許可で確認すること

食品PBでは、メーカーに製造を任せても、販売する側で確認すべきことが残ります。
必要な表示や手続きは、食品の種類と製造・保管・販売の方法に合わせて整理しましょう。
容器包装された一般用加工食品では、名称、原材料名・添加物、内容量、期限、保存方法、表示責任者・製造所等の情報、栄養成分表示などが主な確認項目です。
原料原産地やアレルゲンなども含め、個別の要件と例外を確認してください。最新の消費者庁の食品表示資料と食物アレルギー表示の案内をもとに、メーカーと原稿を照合しましょう。
賞味期限や消費期限は、希望する販売期間から自由に決めるものではありません。食品の特性、包装、保存条件などに応じた科学的・合理的な根拠が必要です。
メーカーと必要な試験や確認期間、期限設定の担当・責任を決めてください。
営業許可・営業届出の要否は、製造・加工・保管・販売など実際に行う営業内容によって異なります。工場へ委託するから自社は一切確認不要とせず、自社で小分けや加工をするかも含めて、管轄の保健所へ確認しましょう。
食品PBの商品化までにかかる期間と進行管理
商品化までの期間は、既存商品の仕様を活用する場合と、新しい配合・容器から開発する場合で変わります。
見積もりの「製造納期」が、企画・試作・検査・印刷まで含むのか、発注確定後の製造だけなのかを確認しましょう。
| 工程 | 遅れやすい原因 | 先に決めること |
|---|---|---|
| 企画・試作 | 修正の判断基準が曖昧、承認者が多い | 評価項目、修正の優先順位、最終承認者 |
| 品質・期限確認 | 必要な試験や確認期間が後から判明する | メーカーとの試験計画と仕様確定の時点 |
| 包材・印刷 | 容器変更、表示原稿の修正、資材の欠品 | 使う包材、入稿条件、校了日、資材納期 |
| 量産・納品 | 工場の繁忙期、原材料調達、配送調整 | 製造枠、納品先、温度帯、販売開始日 |
発売日が決まっている場合は、その日から逆算して「仕様確定」「表示承認」「印刷発注」「製造」「納品」の締切を置きます。試作のやり直しや資材遅延を見込み、納品直後を発売日にするような余裕のない日程は避けましょう。
相談前に準備したい食品PBの企画シート
初回相談では、すべてを確定する必要はありません。
下表を埋め、未定の項目には「提案してほしい」と書いて共有しましょう。希望と決定事項を区別すると、メーカーや企画支援会社から具体的な提案を受けやすくなります。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 開発目的 | 既存取引先への提案、差別化、調理負担の軽減など |
| 販売先・購入者 | 飲食店、スーパー、土産店、EC/実際に使う人 |
| 作りたい商品 | 食品の種類、参考商品、味・原材料の希望 |
| 価格・数量 | 希望売価・卸売価格、初回数量、月間販売の見込み |
| 仕様 | 容量、容器、常温・冷蔵・冷凍、希望する保存条件 |
| 予算と日程 | 開発・初回製造の予算、希望発売日 |
| 現在の体制 | 既存メーカーの有無、社内担当者、保管・配送体制 |
| 依頼したい範囲 | 競合調査、企画、製造先探し、パッケージ、販売準備 |
取引のあるメーカーがいる場合は、対応できる食品・ロット・包材条件を共有すると、その条件の中で企画を具体化できます。
製造先が未定の場合は、まず商品カテゴリーと必須条件を絞り、対応可能なメーカーを探しましょう。
食品PBの作り方に関するよくある質問
商品やレシピが決まっていなくても相談できますか?
企画や開発から対応する会社であれば相談できます。
まず販売先、顧客の困りごと、予算、参考商品を伝えましょう。自社で決める範囲と提案してもらう範囲を整理し、調査・開発・試作に費用がかかるかを確認してください。
初めてなら、何個から作るのがよいですか?
一律のおすすめ数量はありません。
製造と包材の最低ロットを確認したうえで、販売可能な期間内に売れる数量から判断しましょう。最低ロットが販売見込みを大きく上回るなら、標準容器や既存レシピへの変更、別メーカー、商品種類の絞り込みを検討します。
製造先が決まっていても、企画やデザインだけ依頼できますか?
企画・デザインを支援する会社へ依頼する進め方もあります。
メーカーの仕様書、包材の展開図、表示原稿、販売条件を共有し、企画側と製造側で認識をそろえましょう。誰がメーカーと連絡し、誰が最終承認するかを決めると進行がスムーズになります。
まとめ|食品PBは販売計画と製造条件をそろえて進めよう
食品PBは、販売先と顧客の課題を決め、企画・製造条件・採算をすり合わせて進めましょう。試作で味や使い勝手を確かめ、表示・品質・物流を整えたうえで販売を開始します。初回の製造数だけでなく、再発注と追加生産まで考えておくことが、継続して売れる商品づくりにつながります。
IMAKONOは、食品卸の皆さまの自社ブランドづくりを、店頭での競合調査、コンセプト設計、パッケージデザインから支援します。既存メーカーとの連携を基本に、必要に応じた製造先探しや印刷・包材の手配もご相談いただけます。
「自社商品を持ちたいが、何を作るかは決まっていない」「メーカーは決まっているが、企画や見せ方を整理したい」という段階からご相談ください。販売先、作りたい商品のイメージ、既存メーカーの有無をもとに、進め方をご提案します。
